ページ番号1003600 更新日 平成24年9月28日
ただいまご紹介にあずかりました千葉大学の関谷と申します。私の専門は政治学というものでして、特に自治の問題を中心的に研究しております。と同時にこれから求められる地域コミュニティのあり方ですとか、あるいは自治型社会というものを具体的に組み立てていくということで、千葉県内、ここ6、7年くらいで20以上を超える自治体のいろいろな地域住民の方々とか、あるいは行政、議員の方々ともいろいろな議論をして、条例ですとか、あるいは、コミュニティの具体的な仕組みや制度ですとか、いろいろなものを作って、その貢献をしてきているというところで、今日もその辺の理論と実践経験等々を踏まえた上で、このコミュニティについてお話をさせていただきたいと思います。
お手元に基調講演の資料があると思いますので、基本的にこれから画面に映るものと同じものですので、どちらかをご参照いただきながら、お話の方を聞いていただければと思います。
まず、1つ目、「なぜ地域コミュニティの充実が求められているのか」ということですけれども、今日はちょっと時間が限られておりますので、いろいろな背景の詳しいお話はできませんけれども、ここに書いた「転換期に直面している自治体」ということで、とにかく少子高齢社会というものが本格化していると、4人に1人が65歳、数十年後には4人に1人は、75歳以上の人口が4人に1人を占めるという時代になっていくわけで、社会の構造が大きく変換を迎えている。それに合わせて、労働人口の減少、税収の減少といったことで、行政としても、これまでどおりのやり方ではとてもじゃないけれどもたないという状況に今置かれています。果たして今言ったような高齢者がどんどん増えていく中で、社会負担というもの、例えば社会保障費というものがありますけれども、これも今後はどんどん増えていくのではないか、ということが言われていて、とにかく国にせよ、地方にせよ、階層の関係にせよ、大きな見直しが迫られている。こういう背景が1つあるということをまず冒頭に申し上げておきたいと思います。そういう中で国としても、すべてを取り仕切っていくことができなくなっていく中で、自治体がもっと地域の現場に近いところが、課題解決にあたっていくと、そういう何でもかんでも国がやっていくというのではなくて、その権限とか財源というものを地方にどんどん委ねていって、地方には地方のおかれた状況もあるわけですし、お金の使い方というのもあるわけですから、より地域の現場に即した取り組みを行っていくことができるという、そういう方向に今むかっているということだけ、冒頭に申し上げておきたいと思います。
そういう中で、今日のテーマとかかわってくる大変重要な視点が、「見直しが迫られている「住民と行政との関係」」ということ、これを少しだけ申し上げておきたいと思います。
行政と言いますと、われわれはとにかく納税者なのだから、行政にはやるべきことをしっかりやってもらわなくては困るという側面があることは間違いないわけですけれども、日本という歴史を振り返った時に、明治以来、行政が公共というものを独占する。こういう状況が1つ続いてきている。それが、日本社会において一定の安定性とか安心を作り出してきたこともありますけれども、戦前から続くこの構造です。これが、行政の中で膨大な無駄と非効率を蓄積しているということも、今大きくとらえ直していくことのできるところです。それで地方というのも国に拘束されて、なかなか自由に活動することのできない状況、逆に住民側としても、行政に依存する、何かあればすぐに行政に頼むという状況が続いているということが、1つの現実としてあります。こういう状況の中で、ここ10年くらいは、本当にこういうあり方でよいのかという見直しが大きく始まって、ここに「見直される公共性」と書きましたけれども、1つは、国家よりも自治体、つまり流山市だったら流山市、千葉県だったら千葉県、こういう自治体のほうが、地域社会の現場をよく理解している。国で勝手に課題設計をして、予算をつけて、はいこれを地方で使ってくれと言っても、地方とすれば使い勝手は悪いは、全然効率的ではない。いろいろな問題がでてきているので、地方が自立する時代というのはどういうふうに作り出していけるか。これが大きく問われています。今、民主党政権下においても、地域主権ということが閣議決定されて、これからますます地域とかコミュニティの充実ということが迫られているという流れが1つあります。
2つ目、「現場の課題が行政の能力を超えている現実」ということですが、先ほど申し上げたように、われわれ基本的に行政にいろいろなことをやってもらおうというふうな形できたところがあるのですけれども、行政で対応する、例えば何かの施設をつくる、何かの予算をつけて一定の給付をするとか、いろいろな制度仕組みを行政が作ってカバーしていく。これではもう、地域の現実、現場における問題、例えば高齢者の介護の問題であるとか、子育ての問題であるとか、環境への取り組みですとか、いろいろな問題がでてきているにせよ、とにかくこの行政がすべてを受け持つという時代はもう終わったというのが、今の1つの時代になっているということです。
そして3つ目が、「行政以外にも公共性を担いうる多様な担い手」というものがでてきている。今日ここにお集まりいただいた皆様も大変貴重な担い手になるわけですけれども、地域団体、市民団体、それから近年は企業が、地域にどんな形で貢献するか、企業にもよく社会的責任ということが言われていますけれども、そういったいろいろな行政以外の方々がもっといろいろなことができるということで活動をし始めている。そういう状況にもなってきています。そういういろいろな行政以外の主体が織りなす多様性をどう発掘して、どう紡いで、そして市民生活に活かしていけるかどうか。このための環境づくりということが、今全国でいろいろな速度はありますけれども、動き始めております。そういう意味で今日は地域コミュニティに少し注目してお話をさせていただきたいと思います。
その前に1つだけデータをご紹介しておきたいと思いますけれども、人口比率の変化。これは、日本の全人口に占める0歳から14歳、つまり子どもの割合、これをパーセンテージで示したもの。もう1つは、65歳以上をやはりパーセントで示したものです。そうすると、1940年の時は、子どもの割合が37%、65歳以上が5%という時代。これが、今現在では、子どもの割合が13%、65歳以上の人口が23%で、合計36%で、こういう1つの人口の割合になってきています。いわゆる少子高齢社会。これがますます今後も本格化していくという1つのデータです。もう1つ注目していただきたいのが、子どもと高齢者をあわせた合計ですね。これを見ていただきたいのですけれども、1940年代は42%、これがずっと減ってきたのです。ところが、1990年代に合計31%で、その後は実は増え続けている。それで、2050年には半分が子どもと高齢者という、こういうデータが予測されています。これは何を意味しているのかと言いますと、子どもと高齢者は、ようするに地域とのかかわりが非常に密接だということなのです。つまり、高齢者は、もちろんいろいろな支え合いという問題もありますし、それから今、団塊の世代が、これまで会社人間だった方々が、リタイアされて地域にもどってくる。そうすると、地域でこれからどういうことをなし得るのか。もちろん家で過ごされる方もいらっしゃるでしょうけれども、まだまだ私は元気なのだから、もっと何かやりたい。その何かやりたいといった時に、注目されているのが地域コミュニティですね。地域コミュニティで今まで自分が培ってきたいろいろな能力とか技術というものを何らかの形で活かしたい。こういう方々がどんどん増えています。そういう意味で、コミュニティとの接点を持つ方々がどんどん増えていることが一方ではありますし、他方においては、子どもたち。これは、幼稚園、保育園、小学校、中学校。いろいろな形で、要するに生活圏の中で過ごすということがありますし、さらには、そういう子どもたちを中心にして、1つの家庭が動いているというところもありますから、そういう意味では、やはりコミュニティとの接点が非常に強い。いずれの世代にしましても、コミュニティと何らかの形で、関わりを持つ、そういう世代が、これからどんどん増えていく。逆にいうと、そういう関わりが強い、そういういろいろな、地域でいろいろな活動をしたいという方々が、これからどういうふうに活かされていくのか。その中で、そういった方々が何をなし得るのか。こういうことが1つコミュニティの課題ということで、大きく問われ始めているということを申し上げておきたいと思います。
それで、コミュニティ、コミュニティと言っておりますけれども、コミュニティって一体何なのというところがあるかと思います。本当に人によって、地域コミュニティということをイメージするところはかなりまちまちだとか、私は東西南北、県内県外、いろいろな自治体にお邪魔して、自治会関係者の方から、NPOの方から、あるいはいろいろな活動をされている方々とか、行政、議員の方々とか、いろいろな方々とお話をしますけれども、全然持っているイメージが違うのです。それをここでは相対的に表してみましたけれども、地縁団体、自治会、町内会。これも地域とか自治体によって、その制度が違ったり、運営の仕方が違ったりしていますので、一概には言えませんけれども、とりあえず地縁団体ということで言われるものがありますし、それから近年隆盛してきているNPOとかボランティアの活動がありますし、それから社会福祉協議会もあります。これは市社協、地区社協、両方含めております。それから、だいたいはこの地縁団体を通じて、推薦という形で選ばれて、非常にきめ細やかな活動をされている民生児童委員、青少年指導委員、健康とかその他諸々の関連委員もあるでしょうし、老人会、子ども会、PTA、消防団、防犯協会等々も地域の主体として、それから商店街とか事業者、企業。これが、地域コミュニティを担っている、あるいは支えている主体です。地域主体という言い方をよくしますけれども、地域主体とは、まさにこういったものです。いろいろな目的を持って、いろいろな単位で、あるいは、いろいろな価値観、手法でもって、いろいろな活動をされている。これが地域コミュニティのイメージです。
もう少し掘り下げてみてみますと、まず地縁団体というのは、あらためて言うまでもないところですけれども、特徴としては、世帯単位、自動的な加入、これも説得をして入ってもらうとか、強制的に入れるとかいろいろな現状がありえますけれども、それから包括的な機能、行政補完機能、排他的独占、ちょっと難しい言い方ですけれども、1つの地域に1つの支援団体。これも自治会、町内会、あるいはそのような制度の1つの特徴です。それで、地縁団体ないしは役員を中心とする地域のまとまりとして、これはどの自治体地域にもある、非常に歴史のある、蓄積のある文化です。行政が地域対応する場合の中心的な団体。行政としても地縁組織が、地域コミュニティをカバーしているということですから、とりあえず、自治会にお願いすると、いろいろな調査をしてくれたり、いろいろな配布をしてくれたり、こういうふうな形で関係がつくられてきたということもあると思います。実際の取り組みとしては、先ほど包括的な機能と申し上げましたけれども、清掃、防犯、福祉、行事、道路、建築、調査等の共同管理。各種委員の推薦。行政への陳情。各方面にわたる相談機能、調整機能、合意形成。こういったものが地縁団体を通じて、まさに今日お越しの方々の中にも、まさに中心になっている担い手の方々がいらっしゃると思いますけれども、こういう非常に幅広いことをやられていると、これが1つの地縁団体の特徴としてあるかと思います。
こういう地縁団体と同時に、抱えている問題。これを少し指摘させていただきたいと思いますけれども、例えば、地縁団体を悩ます諸問題。自治会長をはじめとした特定の人への負担が非常に重くなってしまっているという現状があるということです。これは例えば行政は行政で、地域でいろいろなことをやってもらいたい、地域にいろいろなことを伝えたいということで、こういう代表の方とかにお願いしてきています。先ほど言った包括的な機能を地縁組織は担っているわけですから、とにかくその中心的なやりとりをされている方々は、あちこちに顔をだす。これが今月の俺のスケジュールだなんて言ってみせてもらったことがありますけれども、もう殆ど、会議、会議、会議ということで、あとは、とにかくイベントに顔をだして挨拶をしなくてはいけないとかいうことを含めて、とにかく負担が大きくなっていることが、1つ客観的に見て言える状況かと思います。それで、行政からの依頼は増加する傾向もあります。それから組織としてみれば、加入率の低下、担い手不足、協力調達の困難。こういう現状も今の地縁組織の中にはあるかと思います。それから、活動運営。これもうまくいっているところはいっていると思いますけれども、そうではないところは、毎年やるべきことをこなすので精いっぱいで、非常に形式的に団体運営ということが行われているというところがあるかもしれませんし、場合によっては、活動というものが非常にマンネリ化してしまって、大変だからもうやりたくない、あるいは参加しても何だか面白くない。こういうふうに言う方々とかも少なくはありません。それから、中堅若手世代の離反。これは、世代が若くなっていけばいくほど、地縁団体から離れていく傾向があります。これはどこにでも、多かれ少なかれみられる傾向です。それも古くからある組織、それは古いから俺の感覚にはもう合わないという形で若者たちがどんどん関心を寄せなくなっている。こういう現状も指摘されています。それから位置づけの問題から言いますと、行政への協力団体。自治会、町内会というのは、行政への協力団体なのか、それとも住民の自主的な団体なのか。これは実は、性格としたらかなり違います。自分たちの組織ということで、まさに自分たちのことを自分たちで行っていく。こういう自主的な組織なのか、それとも行政から頼まれているからしょうがないからやっているということなのかですね。これは今後のコミュニティ運営といった時に、1つこの性格性といったことはあらためて明確にさせていく必要があると思います。やはり今後問われているのは、住民の自主的な団体になってきているかどうか、これが大きな課題になってきているということが言えると思います。そういった問題状況がある中で、負担軽減、分業化、他の団体との連携。これがまさに今、問われている大きな課題ということを申し上げておきたいと思います。自分たちが置かれている問題状況をめぐる開かれたやりとり、それから、問題の交通整理と共通目的ということをあらためて明確化していけるかどうか。負担が集中するということをどう回避できるかどうか。負担が集中するということは、逆にいうとその負担をどう取り除けるか、そして取り除いたものを逆にいうと、どういう人たちがどういう形で分かち合う、分業し合うのが1番望ましいやりかたなのかどうか。これはあらかじめ決まったものはありません。だれがどういうことをやるのかということは、あらかじめ決まったものはないです。だからこそ、住民の方々は、その地域の方々が、この辺の問題というものをどうあらためてどう共有して、そしてだれがどういうふうに担っていくことが、最もその負担を集中させないで、うまくバランスをもってやっていけることなのかどうか、その見直しといいますか、とらえ直しというものが始まっているのが最近の傾向です。
それから今度は社会福祉協議会。後ほどまたお話がでるかもしれませんけれども、コミュニティワークの原型ということで、社会福祉法に根拠を置く法人です。基本的には、市民の福祉活動を包括的に支援している団体ですし、福祉団体などを目的とした市民団体を育成助成する、ボランティアセンターの運営、あるいは保健福祉サービスといったものを提供していく。こういったいろいろな福祉といったものを基軸としながら、幅広い形で地域をつないでいる、あるいは地域を支援している。こういう主体もあります。
それからNPO等々ですね。これもあらためて言うまでもありませんけれども、利益を再分配しない非営利の法人、団体です。これは行政から相対的に自立した形で活動というものが行われている。参加者の自発的な意思と行動力。会員の会費とか、活動への参加費とか、寄付、それから競争的な資金を獲得することによって、活動していく。そういう1つの新しい地域活動の形です。1998年にNPO法というものができましたけれども、そこに載っている分野、17に分かれた分野があります。それぞれの分野で、まさにボランティアとか自主的な団体が、本当にいろいろな活動をされています。流山市もたくさんあると思いますけれども、こういう活動があります。
今申し上げたいろいろな地域主体というものがありますけれども、それが地域コミュニティというところからみた時に抱えている問題。先ほど地縁組織の問題課題を申し上げましたけれども、コミュニティ全体として見た時に、でているのが、1つは、ムラ社会といったような閉鎖的関係です。どうしても日本という社会は、ウチとソト、本音と建前というのを使い分けている文化というのが非常に色濃いです。これは、都市部だろうと農村部であろうと、この文化は非常に強いのですね。でも、これを少しでも突破していこうとしていかない限り、これからのコミュニティの充実というのはなかなか期待できないということは、強く、強調して申し上げておきます。この閉鎖性というものが、少しでも開けることが、コミュニティを充実させるということは、開くということなのですね。これができるかどうか。そのためには、固定観念にとらわれているのではなく、やはりお互いがどういうことを考えているかということを理解し合う。それは、全部が全部一緒になる必要はないのですね。やはり、いろいろ話したけれどあの人たちとはやっていけない。それはそれでいいのです。だけれど、まずは、お互いにどんなことをやっているのか、このコミュニティには、どんな人たちがいるのか、これを知るということが非常に大事になってくるのですけれども、なかなかこういう閉鎖的な問題がつきまとっています。
それから、これもぜひご承知いただきたいところなのですけれども、近年ボランティア活動が盛んになっていると言います。大きくは、例えば、阪神淡路大震災の時のボランティア、それから近年でも、どこかで災害が起こったら、すぐにあちこちから人が集まる。非常によい傾向だと思いますけれども、これは、ボランティア活動ですけれども、一過性という特徴があります。つまり、目の前に問題があるから、それなら今時間があるからこれをやってやろうというふうに、でも、それが恒常的にずっとそれが続くのかというと、その方は仕事も持っているだろうし、自分の時間も大切だろうから、そういうボランティア活動をずっとやるというのはなかなか難しい。ですから、ボランティアというのは、考え方、とらえ方にもよりますが、何か一か所に集めて、はい皆さんどうぞというように、組織だってやっていくというのは非常に難しいと思われます。基本的には自由な中で、やりたい時にやる、必要な時に参加する。こういうのがボランティアの特徴としてあるのですね。固定化されたアイデンティティというのを非常に拒否する。何かボランティアだったらボランティアの組織を作って対応する。でもそういった1つの組織だとか団体にくくられることを、ボランティアというのは嫌う。あるいは、若者たちも、こんな組織を作ってやろうとすると、そんな組織なんて面倒くさいものはやりたくない、ただ、俺は時間があって、目の前に困っている人がいるから、その人について今この場で助ける、それだけなのです。何か組織だって、会員になってどうのこうのなんて、そんなことはいやだ。こういう傾向は非常に強いです。ですから、まちづくりに参加しようということで、いろいろな形で住民の方々に働きかけているところもあると思いますけれども、やはりこういうところがあるのです。1つはくくられたくない。でもそれは、無関心とは違うのですね。いろいろな関心は持っている。だけれど、それを1つの制度とか1つの組織でがんじがらめにしてしまうということに関しては、非常に拒絶感を示します。こういう傾向があるということも、少しご承知置きいただきたい。ですから、こういう問題をとらえたうえで、あらためて役割の交通整理、つまり、地域コミュニティ全体から見た有効な地域主体間の役割分担、ないしは連携、こういったものを考えていけるかどうか。これがこれからの地域コミュニティに求められていることだと言うことができると思います。
大変駆け足になってしまって恐縮ですけれども、そのような形でコミュニティ、そしてコミュニティにはいろいろな主体があり、それぞれの主体が、先ほど申し上げたように非常に、ある意味では、自分たちは開いているつもりなのだけれども、外から見ると閉じられているように見えてしまう。排除するつもりはないのだけれども、結果的には閉じられているような状況になってしまっている、あるいは、その団体ということを前面にだし過ぎるがゆえに、それを嫌う人たちがいるので、そういう可能性というものを逃してしまっている。いろいろな可能性をこれから紡いで、いろいろな課題に向かってそれを活かしていかなくてはいけないのに、その可能性というものがばらばらになってしまっている。まとめようとするから拒絶するというふうな部分もでてきてしまって、地域資源というものが、有効に結び付けられていないという現状がありますので、これはどういうふうにやって克服していけるのかとか、こういうことで今考えられている1つの考え方が、小学校区単位、あるいはそれに近い単位で、このコミュニティというものをもっと充実させていこうという考え方です。その考え方のベースが、補完性に基づく地域コミュニティづくり。補完性というのは、私の研究テーマでもあるのですけれども、簡単に申し上げますと、補完というのは、より小さな単位の自主性、自立性を尊重し、その単位でも取り組みが困難な事柄については、より大きな単位が補完する。やや理論的な話で恐縮ですけれども、こういう考え方です。当然いろいろなレベルがあります。国家、県、市行政、それからコミュニティ、そして今申し上げたような地縁組織とかNPOとかという地域主体、いろいろなレベルがあります。それで、今地方分権ということがいわれているのは、国から実際にどう権限を委譲していくのかという話です。でもこの流れというのはこれで終わるものではなくて、今度は例えば流山市であれば流山市、これが今度は地域とか小さな地域団体、これにどうさらに分権化していけるか。つまり、これからの自治とかまちづくりというのは、より小さな単位で行っていく。より身近なところで行っていく。そういうところから、いろいろな可能性を引き出していくと、紡いでいく。そのためには、流山市とはいっても非常に大きいわけですから、そういう大きな単位だけで考えているのではなくて、もっと小さな単位で、もっと顔を見合すことができる、そういう範囲の中で、もう少し突っ込んだ、踏み込んだまちづくりというものをやることができないのだろうか。こういう模索が、今全国のいろいろな地域、自治体で模索され始めています。基本的には、そのいろいろな主体の自立性ということが前提になります。自治会、町内会、この従来の蓄積というものを活かしていく。NPOとか地区社協とか、いろいろな地域主体の自主性というのは基本的に尊重していく。でも、その単位だけで、できることとできないことがある。そのできないことというのを、どういうふうにわれわれはカバーしていかなければならないのか。その1つの仕掛けというのがコミュニティというものへのまなざしなのですね。そういう単位だと補完し合える。この太い矢印の部分、これが今日、1つ問われているポイントだということを注意いただきたい。
そこで近年注目されている1つの考え方として、この小学校区単位に地域まちづくり協議会というものをつくっていこうという流れがあります。小さな自治にふさわしい規模の小学校区。顔を見合わせることのできる近隣関係。地域住民の関心・問題・立場・文化を配慮した相互交流の可能性。そして、住民と職員との応答的な関係。こういう、より顔を見合わせて、より意思疎通を図る環境をつくっていこうという、こういう流れがでてきております。これは先ほど言った、地域の主体、これがどうしてもまだまだ自己完結的になっている。それぞれがそれぞれの活動で活かしていけばよいことですけれども、例えば先ほど言ったように、特定の方々への非常に負担が重くなってきてしまっているとか、あるいは、もっと連携すればもっとうまくできるのに、壁があってなかなか進んでいない、いろいろな状況がある中で、このいろいろな地域主体とか可能性を横につなげる仕組み。これもこれから合わせて考えていくことが大事なのではないか。これが、今新しいコミュニティづくりということで、注目されている1つの考え方、流れです。この横のつながりがさまざまな形で見いだされていく契機、1つの契機として、この小学校区単位のまちづくり協議会というものが、検討模索されているというところです。これは、いろいろな地域を回りますと、また新しい組織をつくるのか、それじゃなくてもいっぱい仕事を持って大変なのに、また屋上屋を重ねるようなことをやらせるのか、という批判はどこでもでています。ですけれどもそれは、ようするに団体代表の集合体として考えてしまうからずれていってしまうのですね。だから屋上屋を重ねるというのではなくて、横のつながり、ですから、次のページにありますけれども、目的に応じた連携のイメージで、例えば、個人負担の軽減ということで、地縁団体の役員負担というものを分散させて、それを引き受けられる人材とか団体というものを、小学校区単位という少し幅広い中で見出していく。それぞれの地縁団体の包括性、ネットワークとNPOの機動性、柔軟性、そういったものを結び付けていく。こういうイメージ。また、例えば地域福祉ということを考えますと、地域福祉というのは、自治会によっては自治会でやっているところもあるのです。民生児童委員さんたちが活動されているところもありますし、社協としてやっているところもありますし、福祉事業所としてやっているところもあります。こういった横のつながり、もちろんできているところもありますけれども、まだまだ限定的なところであるかと思いますので、このつながりというものをどう豊かにしていけるかどうか。さらには、地域福祉といっても、福祉だけ考えていればよいということではなくて、今でているいろいろな事例としましては、例えば環境と福祉をつなげていこう、自然環境のために、例えば、川の掃除をするとか里山保全活動をするとか、そういう動きと福祉活動、例えば健康づくりをうまく結び付けて1つの取り組みにしていく。こういう分野をまたがった活動、工夫。福祉にはあまり興味はないのだけれども、環境には興味があるからちょっと参加してみようかなとか、そういうところからでてくる相乗効果、これは非常に大きなものがあるということで、いろいろな成功例も全国で多々でてきております。とにかくいろいろな主体というもののかかわり、地域安全であっても、防犯部門、地区社協、防犯関連の団体、それから子育てとかまちづくりに関心のある方々と連携する地域の安全となると、また違った観点からとらえることができるようになる。ここも本当にケースバイケースですけれども、いろいろな可能性というものを結び付けていく。福祉は福祉、安全は安全というふうに、ばらばらにとらえるのではなくて、いろいろな主体、いろいろな可能性というものを結び付けて、相乗効果でもって、もっといろいろな可能性を育んでいく。こういうことが求められています。
事例を紹介しておきたいと思いますけれども、兵庫県の宝塚市というところは、平成5年ぐらいから、コミュニティ活動、コミュニティ政策を行っているところです。これは、自治会と自治会を中核とする小学校区単位のまちづくり協議会、この2本柱で、コミュニティというのを運営しています。そのポイントは、従来の自治会の連携を軸とし、また自治会活動がさらに充実することをめざし、その自治体の規模にもよりますけれども、概ね小学校区に、個人が尊重され、また個人参加が可能なコミュニティ活動ができると、そういうものにしていく。そういう協議会をつくる。子どもでも高齢者でも参加できる距離を重んじた、ようするに身近な単位での横につながる組織をつくろうということです。そういったところにいろいろな計画をたてて、そういう単位で計画をたてていく、こういう試みもでてきています。それから先ほど言ったように、自治会の他にも、あらゆるボランティアグループや目的別団体が参加できて、横断的な連帯を目指していくということ。それから、行政との関係ですけれども、行政はそういった主体を尊重しつつ、住民活動の施設設備や活動助成金で支援する。例えば小学校区単位でこういった組織が立ち上がれば、市としては、その協議会に100万円だったら100万円、といった1つの交付金とか補助金を出すのですね。その100万円をどう使うかは、地域の事情によって全然違うわけですから、その使い方は、その協議会で、自分たちで決めるという、こういう考え方です。つまり、行政は、今のところは自治会を中心としていろいろなお願いをしているところもあると思うのですけれども、それはそれで1つのルートなのですね。ですけれども、こういう小学校区単位でそういう協議をするような場ができれば、市としては、そこにもいろいろなものを組み合わせていく。そこは、先ほど言った地域主体単位でやるのとはまた別なことをなし得る範囲あるいは主体から、そういう連携のもとにできあがっている1つの受け皿ですね。その受け皿に主として100万円とか200万円という支援をして、今度は自分たちでやる。自分たちでお金の使い道からいろいろな活動までも賄っていく。そうすると住民としてもいろいろな意味でのやりがいというものがでてくる。ただ、決められた活動に決められた支援というのではなくて、自分たちでどういうところにウェイトをおいているのか、どういうところに力を入れたいのか、どういう可能性をもっと開きたいのか。それはやはりその地域の置かれた状況、環境によって全然違うのですね。その地域住民なりの形というものを作りだしていく。こういう場として小学校区単位の協議会が今注目されていますというお話でございます。この受け皿がどんどん充実していけば、先ほど申し上げたように自治体分権の流れが今ありますから、もっと例えば200万円とか300万円というふうに増やして、住民の自主性、自分たちで決めてやる範囲というものを増やしていく。そして、市がやるべきことというのをどんどん減らして、もっと住民が自分たちでやれるようなことは、どんどん自分たちでやっていく。あとは、そういう単位と行政との間でどういう協働が可能なのか、そういう連携のあり方というもの、これもまた模索中です。どうしてもそういう場があるのとないのでは、かなり違います。こういうことが今問われている1つの実例でございます。
この宝塚市の場合は、こういうふうにやって、先ほどいろいろな取り組みを交通整理する必要があると申し上げましたけれども、宝塚市の場合には小エリア、これは200から300世帯、それから中エリア、小学校区、今のお話、それから大エリア、これは生活完結圏ということで、もっと大きくなります。小エリア、つまり自治会を中心とした、あるいはそれに類する組織を中心とした活動、隣近所の顔が見え、あいさつや近隣掃除などの適度のおつきあいがある。育児や葬祭、宅配、防災、防犯などには役立ち、遠くの親戚より近所の助け合いが大切だ、そういう部分を自治会とかが中心にやっていく。ここにあげてありますような、自治会活動で、街頭、防災、防犯、葬祭を行ったり、生活情報を配布回覧したり、道路、マンション等々へのやり方に異議を唱えたり、老人クラブ、婦人会、子ども会というもので、いろいろな活動をしたりとか、あるいは親睦行事をやったりという、こういう単位の1つの活動というものが、当然のことながらあり得る。
それとはまた別の形で、今度は中エリア。今申し上げた横のつながりで、小学校区という地域性としてはもう少し広い範囲の中でやれることとしては、幼稚園、小学校など子どもを中心とした交流、PTA活動の範囲とか、地域のまつり、運動などの催しの範囲、生活用品など身近な買い物をする範囲。そういう範囲の中で活動をしていく。具体的な内容としましては、まちづくりボランティア活動、隣町との連携協調、会食・配食などの福祉ネットワーク、健康スポーツ活動・運動会、青少年育成、学習文化。花ランド緑化、環境活動。まつり、防災、人権活動。地域情報紙の作成発行といったような形ですね。これは、宝塚市なりの交通整理の仕方です。ですからこれは、どの単位、どの範囲でどういうことをやっていくのかというのは、まさにその地域住民の方々が、自分たちの今の状況というものをあらためて検証するといいますか、照らし出して、こういうところに今やはり負担があるのだ、問題があるのだと、こういう部分は今までどおりでやっていいのだよ、この部分はもうちょっと違ったやり方があるのではないか、というようにいろいろな意見を相互にだし合いながら、その1つの問題整理、交通整理というものをしていく。そして従来の団体でできることは従来の団体だけでやっていく。でもそうではない、もっと連携してやったほうがよい部分については、連携した形で行っていく。こういうコミュニティの見直し、あるいはその中での交通整理と、そして、どの部分をどういう人たちが担うのが1番有効なのか。負担を増やさないで、しかしながら、相乗効果でいろいろな可能性を切り開いていく。自分たちの地域がどういう整理の仕方、どういう役割分担、分業体制が望ましいのか。これはやはり地域単位で考えていく。これがまさに今求められているコミュニティづくりだということを申し上げておきたいと思います。このあと、伊賀市の事例もございますけれども、これはまた後ほどお読みいただければと思います。
こういうコミュニティへの期待ということですけれども、いろいろな言い方がありますが、今日は2点ほどあげさせていただきました。1つは、「自治体運営を支える「地域力」を作り出す必要」がある。これは行政が単独でいろいろなことをやる、それには限界がある。もっとそれ以外に活力というものを、コミュニティがどんどん作り出していかなければ、とてもじゃないけれどもこれからの時代を乗り越えていくことができない。もちろん行政としては、しっかりこの税金をもって、最低限の政策を保障すると、これは当然やってもらわなければいけないのですけれども、それだけでも当然限界がある。そういった時に、市民とか民間の活力というものをどう加えていくかですね。あるいは融合させながら、地域力というものをつくりだしていけるかどうか。こういう大きな課題に今直面している。そして、地域の諸資源、資源というのは、人であったり、ものであったり、お金であったり、情報であったり、いろいろな施設であったり、あるいはその地域に蓄積されてきたいろいろな歴史であったり、文化であったり、伝統であったり、いろいろなものが資源として、確実に存在している。こういう資源というものを、1つは、まだまだわれわれ住民はどんな可能性があるのか、どんな資源があるのか、知らない状況にある。これはやはり、もっと掘り下げて、もっとお互いに理解しあって、そしてできるところから、そういう可能性というものを活かしていくということが求められている。それはやはり身近なところから、どんなものがあるのかな、どんな人がいるのかな、どんな可能性があるのかな、これは、身近であればあるほど自分との接点が出てくるわけですし、それについて、自分が何をなし得るのかということを考える契機も身近なところからでるということが起こり得るということです。
もう1つの柱が、「市民相互で支え合う共助の可能性」。これはやはりコミュニティに期待されているところです。公助というのは、公に助ける。これは行政がやるべきところで、とにかく必要最低限はやってもらわなければならない。同時に求められていることが共助、これは、住民相互がお互いに助け合いながらやるところはやっていくという、それは、高齢者を支えあう、これもどこかに任せておけばよいという話ではなくて、本当にそれは家族であったり、近隣であったり、いろいろな団体であったり、そういった人たちもとにかく、もっているものを最大限活用して、それでもってようやく支え合いということができるのであって、その裾野が広がれば広がるほど、それだけそういう支え合いということは充実していく。こういう1つのポイントがあるわけです。さらに、共助というのは、身近な実感というところがありますし、当事者たちへの必要性。ただ、行政という視点からみると、高齢者は高齢者とひとくくりにされてしまう。障害をもった方々はその障害者ということでひとくくりにされてしまう。ですけれども、現場の実態をみれば、障害を持った方々だって、いろいろな状況に置かれているわけですから、当然自分でできることは自分でやる。どうもこういう支援が必要だ、ああいう支援が必要だという方々が、本当にその置かれた状況によって、全然何を求めているのかということは違うのですね。市としてはこういうことを支援する、でも私はそんなことは要らないということも、いっぱい現場をみればみるほどある。ですから、こういう共助というのは、当事者により即して、その人には何が求められているのかということを、細かく丁寧にみていける。行政という客観的なところでひとくくりにする、ひとくくりに見なす、ひとくくりに支援する、ということではなくて、当事者に即しながらいろいろな必要性を見出していく。いろいろな提供できること、お互いに提供し合えることを確認しあっていく。そういう中でできる支援ということを行っていく。こういうことができて共助の完成です。そういうことを踏まえた上で、「市民意識の緩やかな高まり」ということは、今申し上げた中に1つありますが、あとでまた。ちょっとご覧いただければと思います。
いずれにしましても、このコミュニティ、地域コミュニティにおける補完関係というものをどういうふうにつくりだしていけるかどうか。これはすぐできるということではないと思います。これまで蓄積されてきたこと、今抱えている問題、これはやはり立場を超えて、共通了解を図っていくことが必要でしょうし、そのためには、今置かれた現状ということをお互いに理解しあっていく。コミュニティづくりで、私が大事だと思っていることは、お互いに承認し合う、認め合うということだと思っています。つまりそれは、自治会活動だったら自治会活動で、これまでいろいろな活動をされてきた方々がいらっしゃるので、そういう方々がいる、そこにはどういう意味があるのかということを知る。そういう部分がなければ、やはりおかしいと思いますし、他面、NPOですとか、ボランティアですとか新しい形のことに参加してきている方々もいる。そういう方々がどういう人たちで、どういうことを目指していて、何を求めているのか、何を期待しているのか。これはやはりお互いに、知ることが大事だと思いますし、今ちょっと気になっているのは、『市民活動図解』というのがあるのです。つまり、非常に活動されているのだけれども、行政もなかなかうまく連携できない、地域住民もなかなか広まっていかないということで、「私、本当に精一杯」とおっしゃる方々も少なくないのです。これは非常にもったいないというか、そういう可能性をどう補完し合えるか、このあたりを探っていかなければ、せっかく芽生えた可能性というものが、どんどん後退していってしまう。このことは、ひいてはコミュニティの衰退にもつながっていくことになりかねない。そういう問題だとわかっていますので、そういう現状というものを、お互いに認め合いながら、その可能性というものを模索していく。その時の1つの契機として、こういった小学校区単位、ないしはそれに類する範囲での、そのつながり方が今模索されていると。私としましても、流山市でぜひこういった可能性を模索して、コミュニティというものが、非常にこれからますます充実していけば、私もささやかながら貢献できればと思いますけれども、そういう可能性というものを皆で検討していくということを、期待いたしまして、私の話にかえさせていただきたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。
市民生活部 コミュニティ課
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