平成27年11月6日(金曜)、生涯学習センターで市民団体「温暖化防止ながれやま」の省エネルギー学習会「省エネ市民会議」が行われました。省エネ市民会議は同会が平成19年から月に1回行っている自主活動で、今回は記念すべき第100回として、NHKなどにも多数出演の慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授・伊香賀俊治さんを招いてご講演いただきました。
伊香賀さんは、国交省や環境省などの審議会や調査会の委員などを歴任する方で、テレビなどにも多数出演されている建築・都市環境工学の専門家です。今回の講演では、断熱住宅を環境と健康の両面から捉え、同じく慶應義塾大学医学部との共同研究を進める屋内気温と疾病の関係などを中心にお話しいただきました。
教授によると、木造の断熱住宅はエネルギー使用や建設から解体までの総合的なCO2排出量など環境面で優れているのと同時に、特に高齢者の健康面で多大なメリットがあるといいます。不慮の事故での死亡者数は、家庭内での事故が交通事故の倍以上となっており、家庭内事故のうち65歳以上の方に限ればその3分の1が浴室での溺死だそうです。
また、高断熱住宅が普及していない九州などの温暖な地域で冬期の循環器疾患・入浴事故による死亡例が多くなっており、千葉県も心疾患の死亡リスクで8位に入っていました。逆に高断熱住宅が普及している北海道や東北、北陸などは死亡リスクが低いという調査結果が出ており、欧州などでも同様の傾向が見られるといいます。
イギリスの研究では、夜間を含め18度を最低限の許容温度とし、2006年法改正により既存の賃貸住宅における基準を満たさない住宅の改修・解体命令を法制化しているそうです。日本では集合住宅や建売住宅に対する義務化の法案が通ったそうですが2020年度までの猶予期間があり、まだまだ費用面の問題など解決すべき課題も多いとおっしゃっていました。
質疑応答では、住宅の高断熱・高気密というと魔法瓶のような家で逆に熱中症などのリスクが高まるのではないかとの質問もありましたが、熱中症での救急搬送者は年間5万人前後(そのうち死亡者は1,000人程度)に対し、冬の脳卒中・心筋梗塞などによる死亡が34万人、肺炎などによる死亡が18万人と桁が違うことからも、やはり住宅の高断熱・高気密化と適切な暖房冬のリスクを低減し、夏はすだれやグリーンカーテンなどの通風を生かした生活をするのが望ましいのではないかとお答えいただきました。
質問は尽きることなく、予定の時間を大幅に延長し約2時間半の講演会は終了しました。普段、温暖化防止ながれやまが研究を行っている地球温暖化側面とは一味違った健康側面との関連などの新たな切り口に、参加した方々も感心しきりでした。伊香賀教授の穏やかな語り口も分かりやすく柔和な人柄と相まって皆さん満足されていました。温暖化防止ながれやまが行う省エネ市民会議の次回は12月4日(土曜)に行う予定です(講師・テーマは未定)。詳細は同団体ホームページをご覧ください。
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