今年度、選奨土木遺産に選ばれた利根運河がこの季節、寒い朝には幻想的な姿を見せてくれます。利根川と江戸川をショートカットで結ぶ利根運河は、明治時代に貨物の輸送量が増え、民間事業として建設すべく利根運河株式会社が設立されて、1888年に着工され1890年に完成しました。工事を監督したのは、1879年に来日したオランダ人技術者のムルデル(Anthonie Thomas Lubertus Rouwenhorst Mulder)です。
開通直後には一日平均百隻を上回る輸送実績をあげましたが、鉄道の敷設が進むにつれて貨物輸送は水運から鉄道へと移行し、先細りとなりました。最盛期は、開通から1910年頃までのわずか20年間程度であったとされています。通過貨物の減少に伴い、1944年には水運用の運河としての使命を終えました。また、この水運廃止に先立ち、1941年には利根運河が国有化されました。
1975年に、首都圏の水需要をまかなうために利根川から江戸川へ導水するための利根川広域導水事業が開始され、その導水ルートのひとつ・野田緊急暫定導水路として利根運河が再利用されることとなりました。この際、それまでは500m程下流にあった利根川との接続点を現在の場所に移動し、入口に野田導水機場を設けたため、利根川の水が自然に流入することはなくなりました。北千葉導水路が完成し導水としての役目を終えた現在では、運河水辺公園などの整備などが行われ、平成16〜17年度には観光千葉立県モデル事業にも選ばれさまざまな施設整備等も進み、現在は市民の憩いの場として親しまれています。
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