平成19年4月1日(日曜)、満開の桜の下で花見を楽しむ人々が多かった利根運河畔に新名所が誕生しました。「竹林とお蔵の貸しギャラリー〜ギャラリー平左衛門」です。東武野田線運河駅から3分というアクセスのよさに、利根運河を見渡せる竹林に囲まれたロケーションのよさもあって、花見客や散策中の人々が足を止めて竹林の屋外写真展を見ていました。オープニング記念となった写真展は、利根運河など地元を撮り続けている写真家の森かずおさんの作品。竹林の屋外展示では、毎年5月に柏市(旧沼南町地域)で行われる東葛印旛大師霊場を撮影した「祈る人々」約100点で、蔵の中では「運がよい」という縁起を担いで「利根運河いい」というタイトルの利根運河周辺の写真が30点。4月末まで開催されるため利根運河の写真は途中で作品を掛け換えるそうです。森さんは「運河は撮り始めてまだ2か月ですが、毎日が感動の連続。これを機会に曲線が美しい運河のよさを知っていただけたらうれしい」と語ってくださいました。
この蔵は、「野田に生きた立川流宮大工 佐藤庄助則久・里次則壯」の著書などもある日本建築学会会員の鈴木里行さんによれば天保6年3月13日生まれの有名な宮大工・佐藤庄輔(一説には庄助)の手によるもの。蔵には、佐藤庄輔が明治27年12月に山田平左衛門宛に書いた「小壁倉新築仕様書」が保存されており、26円29銭で「右之通リ手抜キ無様仕立上マス」という文字が読み取れる。今回、ギャラリー用に改造した建築士の若泉隆さんは、泥壁の中から出てきた荒縄を手に「110年以上前の縄が引っ張っても切れないことに驚いた。スジカイで強度を高めるのではなく、泥壁によって強度を保ち関東大震災にも倒れなかった日本建築の知恵を感じる」と語っていらっしゃいました。また、館長の山田喜雄さんは「日清戦争の年に、ひいおじいさん平左衛門が造った蔵を改造しました。地域の人間関係が希薄になっている現代社会にあって、人と人が出会い、そのつながりが広がっていく場にしたい」と抱負を語ってくださいました。
この日は、午後からオープニングセレモニーが行われたため、竹林の屋外写真展だけが自由に見られました。ところどころに竹を切ったところに花が活けられ、竹に書が書かれています。また、改造の際に屋根から下ろした瓦に「運河堂々」などの書を書いてモニュメントにしてくれたのは書道家の西村五葉さん。瓦や竹などが庭全体のアクセントのように生かされています。市内こうのす台からサイクリングで桜を見に来て蔵の存在を知ったという高原敏雄さん(72)は、「竹林が保存されているだけでもすばらしいのに、これが文化的な場として公開されているのに驚きました。利根運河には運河大師などもあると聞きますが、もっとこうしたイベントや歴史などを通してその魅力などをPRすべきではないでしょうか」と感想を聞かせてくださいました。
オープニングセレモニーには柏市大津ケ丘で自宅を開放している「中村順二美術館」の中村勝館長も駆けつけました。71年12月生まれの中村順二さんは、ダウン症による知的障害がありましたが、500点以上の心優しい作品を残し、95年11月、27歳の若さで惜しまれながら亡くなったため自宅を改造し個人ギャラリーにしている中村館長は、個人ギャラリーの先輩であり、高校時代は、「ギャラリー平左衛門」の館長・山田喜雄さんとは同級生という関係だそうです。中村館長は「若い頃は一緒に柔道で汗を流し、還暦を過ぎたらお互いにギャラリーをつくって文化活動になった」と語っていらっしゃいました。また、東初石で「ふくろう博物館」などがある「ふくろうの森」を経営されていらっしゃる松田英男さんも駆けつけ「竹林は風の通る音がいい。一日いても飽きない名所になるのではないか」と語ってくださいました。また、この季節に利根運河水辺公園で桜のライトアップなどをしている流山市観光協会の古坂稔会長代行も来場し新名所のオープンを祝いました。
ギャラリーが新名所となりそうな利根運河は、春には桜、秋には曼珠沙華と季節の花などが楽しめ、散歩やウオーキングコースとしても地域に親しまれています。ことし2月には「美しい日本の歴史的風土100選」(同実行委員会主催、国土交通省・文化庁・全国地方新聞社連合会ほか後援)の「準100選」に選定されました。また、利根運河は、近代土木遺産としても「最も重要な土木遺産で、国指定重要文化財に相当する」Aランクに評価されており、昨年は「土木学会選奨土木遺産」にも認定されました。明治23年(1890年)に利根川と江戸川を結ぶ8・5キロの運河として開通した利根運河は、観光立県千葉モデル推進事業により、桜のライトアップ施設の設置や、曼珠沙華の植栽、眺望の丘の整備など、竣工から117年を経て、さらに市民に親しまれ、魅力ある運河へと変貌を遂げています。
オープニングを記念して、流山を中心にコンサート活動をされている「アンサンブルひつじ雲」の皆さんによって「愛のあいさつ」や「春の歌」、「早春賦」、「愛の賛歌」、オペラ「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲、「グノーのアヴェマリア」などが演奏されました。アンサンブルひつじ雲は、市立江戸川台小学校の同級生で作ったグループ。メンバーは、バイオリン・植田しずかさん、ピアノ・城井悦子さん、マンドリンチェロ・安藤いずみさんとマネージャーの手塚千秋さんの4人。ネーミングの「ひつじ」はメンバーの干支からとったそうです。演奏を聴いた井崎市長は「蔵の中で楽器の響きが実によく調和がとれていてすばらしい。芸術文化活動の拠点として、また、首都圏の憩いの場としての利根運河を広く知ってもらうためにも、ギャラリーがますます市民の皆さんに活用されることを願ってやみません」とギャラリーの活用を呼び掛けました。
同級生同士が「アンサンブルひつじ雲」を結成するきっかけになったのは、小学校1・2年生のときの恩師である故・篠田綾子先生でした。「入院している病院で母が昔を懐かしんで植田さんのバイオリンを聴きたがっている」と恩師のお嬢さんから聞き、都合のついた同級生が何度かお見舞いに行くうち楽器のできるメンバーがそろいました。最初のコンサートは02年6月、先生の入院先の東葛病院。2回目は04年3月、転院先の柏光陽病院で開催しました。流動食しかとれない重度の患者が、童謡や「川の流れのように」など知っている曲が流れると、口ずさみ涙する姿に感激しました。残念ながら、コンサートの3日後に篠田先生は他界されましたが、「先生の縁でせっかく出会ったのに、ここでやめるのは…」と「アンサンブルひつじ雲」を結成し、流山市ボランティアセンターに登録しました。現在は病院、幼稚園、老人ホームなどで演奏活動を行っています。実は、この篠田先生は、ギャラリーの館長・山田喜雄さんの実姉。「先生のご実家でオープニングに演奏できるのは、天国の先生のお導き」と感動した面持ちで語っていらっしゃいました。最後はアンコールに応え、病院で入院中だった篠田先生のために演奏した「川の流れのように」を演奏し、参加者全員で合唱しました。会場では流山市音楽家協会の里舘雅江会長もお祝いに駆けつけ、一緒に合唱に参加しました。アンサンブルひつじ雲へのお問い合わせはマネージャーの手塚さん04−7152−4871へ。また、ギャラリー平左衛門は、東深井431で電話は04−7153−9215。10時〜18時開館で休館は月〜水ですが、桜の季節は毎日開館されるそうです。
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