「仕舞と謡曲の会」が、4月8日(日曜)、西初石2丁目の直道カルチャーホールで行われ、多くの能楽愛好家らが幽玄の世界を楽しみました。流山市能楽研究会(伊藤公明代表)が設立以来25年間、地元で謡曲、仕舞の研鑽、普及に励もうと毎年開催している発表の場です。「竹生島」や「羽衣」などの素謡、「笠の段」や「葵上」などの仕舞、「勧進帳」などの独吟などが10時から14時まで能舞台で披露され、小学生から80歳を越えた中高年まで約30人が出演しました。
指導していらっしゃるのは、観世流名誉師範の伊藤直彦さん(71)。伊藤さんは、有限会社直道書店代表として東武野田線初石駅前で書店を経営していますが、この書店の3階に直道能舞台をつくり、さらに、西初石2丁目に今回、発表会を行った直道カルチャーホールまでつくってしまったほど熱心な方。念願の能舞台を完成させたときには、有名なプロの人々が駆けつけ舞い、演じてくれたそうです。伊藤さんは、20歳で能楽の世界に親しみ、最初は袴での立ち振る舞いにも苦労して、座り方や立ち方も練習したそうです。能面(おもて)をつける前には、能面をじっと見つめて気持ちを乗りうつさせます。また、能面をつけると視野が狭くなるため、四方の柱を頼りに、立ち位置などを考えて演じるそうです。
ホールには、ターンテーブルのレコードプレヤーやオープンリールのテープレコーダーなどもあり、芸能と同じように古いものを大切にしている人々の心意気を垣間見る思いがします。茶道など日本古来の文化と同じように、出入り口の低い楽屋からは自然と頭を下げなければ登場できません。気がつけばマイクもアンプもスピーカーもないのですが、人の生の声がこれほど直接響いてきていることに驚きます。近郷の愛好者が続々と集まり、ホールには松や竹の縁起物の鉢植えが置かれ、紅白の幕で囲まれ、晴れの舞台を盛り上げていました。謡曲は、古典の文章を微妙な息遣いで腹から声を出し、抑えながら表現。仕舞は、能一曲の中の美しい部分を、紋服・袴で、謡(うたい)に合わせて舞うもの。扇ひとつだけを持ち物とし、禁欲的な動きの中に力を秘めた仕舞は、謡と共に能の稽古の両輪となっているそうです。出演した会員は、「健康維持やストレス解消に最適」といい、愛好者も増えているといいます。毎年4月第2日曜日に開催している今回の「春の会」をはじめ7月第2日曜日には「夏の会」、10月第2日曜日の「秋の会」、そして、1月第2日曜日の「謡初」を自前の能舞台で続けています。
能は、鎌倉時代後期から室町時代初期に完成を見た、日本独自の舞台芸術の一種で、現在では日本における代表的な伝統芸能として、歌舞伎と並んで国際的に知られ、世界無形遺産や重要無形文化財にも指定されていながら、若い世代には敷居が高いと敬遠されがちなことから、伊藤さんは、母校の県立東葛高校で能楽を教えるなど、これまでも若い層への普及に力を入れてきました。今後は、「日本の伝統芸能である能楽のイロハを学び、幽玄の世界に触れる入門教室を公民館など親しみやすい場所で開催して、若い人たちに楽しさを知ってほしい」と裾野の拡大に積極的です。愛好者の間では、首都圏の憩いのスポットとして整備が進む利根運河で薪能を開催したいという声もあがっており、実現に向けてボランティアが実行委員会を設立する動きも活発です。
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