ぐるっと流山 3年越しの開催「NAGAREYAMA国際室内楽音楽祭2022」


ページ番号1036216  更新日 令和4年5月21日


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 令和4年5月3日(火曜日)から5日(木曜日)まで、スターツおおたかの森ホールで「NAGAREYAMA国際室内楽音楽祭2022」が開催されました。流山市在住の世界的ピアニスト、パスカル・ドゥヴァイヨンさんと村田理夏子さんのプロデュースによるこの音楽祭は、海外および日本国内から著名な世界的音楽家を招聘(しょうへい)し、質の高いクラシック音楽に触れる機会を流山で是非、実現させたいと言う強い願いから企画されました。二人の世界的な活躍の中で育まれた、一流の演奏者との交流と友情通じて、本企画の主旨に賛同し、世界的音楽家が多忙な合間を縫い、開催にこぎ着けられたのは3年前でした。ところが、今も不安をかきたてるコロナ禍により、やむなく延期。同じ日程、同じメンバーで翌年開催が決定。しかし、コロナ禍の猛威を前に、またも開催がはばまれました。それでも、当初からの招聘されたアーティストの想いは切れることなく、3年目にして、ようやく今年開催となりました。

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 開催に先立ち、舞台挨拶に立った、ピアニストでありプロデューサーである村田理夏子さんは、夫のパスカル・ドゥヴァイヨンとの会話を紹介。「3年も経ってお互い歳をとったねと夫に話をしたら、それよりより3年間練習が出来たのだから良かったと言われました」と、3年間の想いの強さを観客の伝え、音楽祭はスタートしました。

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 公演は、3日間をデュオ、トリオ、ファイナルと各日に公演名をつけ、更に日程の中の子どもの日を意識し、ファミリー向け公演も設け、全4公演が開催されました。音楽祭初日の5月3日のデュオ公演はまさに2人1組で、次々と演奏するもので、<F.プーランク フルートとピアノのためのソナタ>が冒頭を飾りました。フルートの名曲中の名曲と知られるこの曲を演奏したのは、曲の初演者ランパルの高弟・フルート奏者の工藤重典さん。長い叙情的な調べを見事に奏で、ディオの相手であるパスカル・ドゥヴァイヨンさんのピアノの音色も重なり、音楽祭が華やかさと躍動感を持って始まりました。

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 そのあとは、流山公演機会も多い、ハープの吉野直子さんと、今回フランスから来日した、フィリップ・グラファンさんとのデュオで<サン=サーンス 幻想曲 イ長調 作品124>が演奏されました。イザイの弟子であるヨーゼフ・ギンゴルドに師事し、イザイが過ごしたベルギーの避暑地クノッケで、自ら国際音楽祭を創立、芸術監督にも就任しています。この日は、その他、チェロ、ビオラ、クラリネット、それぞれの楽器とピアノがデュオで展開されました。

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 翌5月4日はトリオ公演で、<ドビュッシー フルート、ビオラ、ハープのためのソナタ>で始まりました。静寂な楽曲の中で、透明感あふれるフルートとハープの音色に、肉感的な響きをもたらすビオラを演奏したのは、韓国から来日の、サン=ジム・キムさん。パワフルでありながら、多彩な音色に世界的に定評があり、がっしりした体躯から、繊細でたおやかに揺れる弓さばきから発する音は優美に感じられました。同じ弓さばきでは、<E. ショーソン ピアノ三重奏曲 ト短調作品3>での、バイオリンとチェロも出色でした。ピンク系のドレスがひときわ艶やかだった、中国から来日の趙 静(チョウ・チン)さんは弓を左右に力強く振る姿は凛として美しく見え、それに呼応するように、弓を縦に振り下ろしながら、器用に足を舞台に滑らせながら奏法するフィリップ・グラファンさんの姿も、また優雅さがありました。

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 また、この日演奏された<G.コネッソン テクノ パレード>では、一風変わった演出が展開されました。コネッソンは、1970年生まれの次世代を担うフランス人作曲家で、この曲は、コネッソン自身が、ピアノ弦の弾く音だったり、ブラシで撫でるようであったり、狂気のトランス状態のテンポで終わると表現していることから、パスカル・ドゥヴァイヨンさんは自ら演出を考案し、清掃員もどきのいでたちで登場しました。手には床掃除に使うデッキブラシを持ち、舞台演奏中、突然乱入し舞台やピアノをブラッシングする姿を見せました。観客は突然の出来事に戸惑いながらも、パスカル・ドゥヴァイヨンさんと気づき、演奏の緊張感とは、違ったユーモラスな空気に包まれました。この楽曲に強い印象をつけるのがクラリネットです。演奏は、アメリカから来日の「ニューヨーカー」誌でクラリネットの達人とも評されたチャールズ・ナイディックさん。息継ぎをしないで、吹き続けることができる特異な奏法ができると、プロデューサーの村田さんからMCで紹介されました。

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 5月5日は、ファイナル公演とは別に、ファミリー向け公演が開催されました。クラシックをよりわかりやすく、より親しみやすくとの狙いから、民話の語り部として活躍する山口由美さんを迎え<S.プロコフィエフ ピーターと狼>の他2曲が演奏されました。小柄な山口さんながら、曲に合わせてドラマチックに物語を語り出すと、ピアノやバイオリンの楽曲と、まるで楽しいおしゃべりをしているように見え、会場のこどもたちの目を釘付けにし、こどもの日にふさわしく、クラシックの楽しさにも満ちた公演になりました。

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 そしてこの日、午後からは、「NAGAREYAMA国際室内楽音楽祭2022」ファイナル公演が開催されました。モーツァルト、プーランク、ルーセルの楽曲のあと、この音楽祭を締めくくったのは、室内楽では欠かせない作品、<ブラームス ピアノ四重奏曲 ト短調作品25>でした。40分に及びその演奏は、楽曲のもつ息遣いそのままに演奏者はそれを追い、聴き手はそれに引き込まれ没頭していきます。やがて楽曲の強烈な幕切れとともに音が止むと、感動の拍手が客席全体を揺さぶりました。最後に舞台では、本公演に関わった演奏者全員が登場し、いつまでも鳴り止まない拍手を浴びていました。


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