鰭ケ崎おびしゃ行事
更新日 平成26年1月29日


鬼を祓う紅白の矢 NHKなど報道陣も多数訪れる

[画像]七福神の衣装をまとった7人の当番(76.3KB)

 1月20日、鰭ケ崎の雷神社で「鰭ケ崎おびしゃ行事」が行われました。この行事は、かつては1年の当番7人が耕作した備社田(神社が所有する田んぼ)で収穫された米や野菜を奉納し、五穀豊穣や家内安全を祈願する行事でした。現在では、備社田の耕作はありませんが、祝詞奏上、玉串奉天、トウ渡し、的撃ち、直会(なおらい)、送り込みなどの一連の儀式が江戸時代の享保年間(1716年)から脈々と受け継がれ行われており、昭和52年には市内初の市指定無形民俗文化財に、平成6年には県の記録選択文化財となっています。


[画像]利根川流域で多くみられる(71.4KB)

 「おびしゃ」は弓を射る「歩射(ぶしゃ)」からきているといわれる、利根川流域で多く見られる正月行事です。鰭ケ崎のおびしゃは、多くの行事が土日に行われるようになっている中、曜日に関係なく毎年必ず1月20日に行われています。両側をマンションに囲まれ、住宅地の中にひっそりとたたずむ会場の雷神社。NHKやコアラテレビ、千葉日報などの取材のほか、カメラを持った一般の見物客も多数訪れ、儀式が始まる午後3時には100人以上の観客で境内が埋め尽されました。


[画像]酒を酌み交わす(98.2KB)

 平成22年から始まった、行事の前に鰭ケ崎小学校に七福神が出向く課外授業は今年も行われました。社殿では、諏訪神社の古谷和史宮司による祝詞奏上や玉串奉天から始まり、続いて、新旧の7人の当番が引き継ぎを行う「トウ渡し」の儀式。色鮮やかな衣装を身にまとった旧当番の七福神と、裃に身を包んだ新当番が向かい合い、神酒を酌み交わして引き継ぎを行います。当番の中心となる「初戸(ハナト)」は、富山正治さんから鈴木孝雄さんへと引き継がれました。


[画像]的をめがけて弓を射る(75.7KB)

 そしていよいよ儀式の最大の見所でもある「的撃ち」の始まり。100人を超える観客が見守る中、拝殿から鳥居側に据えられた赤鬼・青鬼の的に向かって紅白の弓矢で射抜きます。的を射ぬくのはなかなか難しいのですが、今年は見事、古谷宮司が的を射ぬき、行事を盛り立てました。なお、鬼の的は現在は印刷ですが、かつては当番の方の手描きで、毎年変わる鬼の表情がなかなか味わい深かったといいます。


[画像]七福神が住宅街を練り歩く(61.0KB)

 的撃ちのあとは「送り込み」です。送り込みは、花で飾られた軽トラックに酒樽や味噌樽、おびしゃに使う道具などを乗せ、七福神や護持会の皆さんの先導で、道具を引き継ぐ儀式です。従来、送り込みは行事の最後に行われていましたが、今年から直会(なおらい)の前に行われるようになりました。七福神の皆さんが、「五穀豊穣」「家内安全」などと書かれた大きな傘を天高くつきあげながら、「オー」「送り込みだよー」と声を上げ、町内をぐるっと回りました。見物に来た大塚和雄さん(美原)は「行事自体は昔から知っていましたが、実際に見に来たのは初めてです。300年の伝統を感じます」と送り込みを見守りました。


[画像]宴会(63.6KB)

 神社に戻ると直会が始まります。直会は、行事で奉納したものを皆で食べる宴会のようなものです。上座には、大根の胴にねぎの首を付けた鶴と、聖護院大根の体にゴボウの頭を付けた亀の飾りが置かれ、氏子の皆さん、新旧の当番が左右の席に分かれます。前年の初戸の富山正治さんは、一年間、無事初戸を務めあげた感想を「ずっと続く伝統行事なので何事もなく続けなければならないという責任感がありました。今は「やったな」という気持ちです」と話し、美味しそうにお酒を飲みました。また、今年の初戸である鈴木孝雄さんは「重責で身が引き締まる思い。当番の7人で心を一つにしてやって行きたい」と決意を口にしました。


[画像]獅子舞とひょっとこ(63.3KB)

 しばらくすると恒例の赤城保存会によるお囃子と神楽の奉納です。獅子舞が威勢よく座敷の中を舞うと、次々におひねりが投げ込まれ、列席者の頭を噛むなどして回ります。ひょっとこも登場し、おひねりを獅子の口の中に放り込んだり、獅子舞とのひょうきんな掛け合いを見せたりし、笑いを誘います。舞いの最後に、獅子舞の口から「謹賀新年」と書かれた掛け軸が飛び出し盛り上がりも最高潮に達しました。


[画像]神楽(58.3KB)

 次に披露した神楽は「稲荷山三番叟」。矢を入り、動物を殺生した翁を、狐がお祓いをするものです。これまで、おびしゃ行事では狐とひょっとこによる「種貸し」を披露していましたが、昨年、赤城保存会が市の指定無形文化財の保持団体に認定されたことを記念し、おびしゃ行事の弓を射る行為ともかけて、今年は特別に「稲荷山三番叟」を奉納しました。


[画像]来年もまた行われます(63.3KB)

 その後、衣装・小道具の引き渡しが行われ、一連の儀式は幕を閉じました。鰭ケ崎おびしゃ行事保存会の会長・宇佐見憲雄さんは「約300年間、形は変わってもその伝統の神髄は変わらないと確信しています。また小学校での授業は来年も実施し、次代を担う子どもたちが目を輝かせるような行事にしてきたいです」と話しました。新しい7人の当番は年4回行われる「おこもり」や、分雷(わけいかづち)神社への代参など1年間のお務めを行い、来年の1月20日には、また七福神の姿を見せてくれます。

 



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